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【 筆界特定制度 】 ・人的証拠(当事者意見)を大切に。
【 問題提起 】

筆界の資料が無いとき、旧公図だけを頼りに境界を復元する場合があります。

その結果、申請地所有者も隣接土地所有者も全く想像もつかない箇所に筆界がくることがあります。

この場合、全く解決に繋がりません。

結果を下ろす前に、担当調査士に声を掛けてくれれば申請を取り下げてこの結果を防ぐことができますが

そうでない場合もあります。

なぜこのような問題が起こるのでしょうか?
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【 当職の意見 】

1.筆界を特定するための証拠資料は物的証拠だけなのか?

物的証拠と人的証拠のバランスが大事だと思います。

筆界特定では文字通り、不明となっている筆界を特定(発見)する作業を行いますが、

まず筆界に関する資料集めから始まります。

筆界を特定するためには何らかの根拠が必要であり、公図や地積測量図などは筆界を証明する証拠資料の1つとなります。

これらの資料は、決して100%信頼が出来るものではなく、人的ミスや作成時期、経緯など、あらゆる条件からそれら資料の

信憑性の度合いを計ります。 (実際には数化できるものでは無いですが)


もし、仮に筆界の資料が旧公図だけだったとします。

一概に信頼性が一定では無いにしろ、平均的に信憑性の度合いは高いとは言い難いものがあります。

特に筆界を特定する場合には言えることだと思います。

筆界特定を申請する当事者は、筆界の位置を知っている場合、当然これらの意見も提出されているはずです。

しかし、これら意見は筆界を特定する証拠として取り扱われることなく、物的証拠(旧公図)のみで筆界を判断しているのでは?

そう思ってしまうような判断が時々あります。

確かに”物”として存在しなければ、証拠として扱いにくいのは現実的にあるのかもしれませんが、裁判でも人の証言を普通に

証拠として取り扱っています。 証拠とするには、”物”として存在しなくても良いのです。

まして筆界の問題なら現地にずっと住み続けている当事者が、その土地について一番良く知っているはずです。

その当事者の意見は証拠としてもっと高く評価すべきではないでしょうか?

※人的証拠として利用できるのは、当事者の意見だけではありません。 例えばその筆界を知る兄弟、親戚、自治会長さん
 でも良いのです。

そしてもし仮に物的証拠と人的証拠を全てかき集めたとしても有力な証拠が無い場合は、無理に筆界を特定することを

してはいけないと思います。 今の筆界特定制度に筆界を再形成する力が無い以上、中途半端な特定をして、あとは

所有権界で解決して・・・は、当事者にとってなんの解決にもならないばかりか、負担を増やす結果にもなりかねません。


2.なぜ物的証拠に偏ることが起こるのか?

「筆界は公法上のもの」という考え方に惑わされているような気がします。

とても大切な考え方ですが、公法上ということで ”当事者の意見は関係ない”ような考え方が生まれます。

これが物的証拠に偏りがちになる原因ではないかと思っております。

しかし、ここでハッキリしておかなければならないことは、

筆界を動かそうという意図の当事者の意見は全く通りませんが、

筆界を発見するための当事者の意見※1は立派な人的証拠となり得るのです。

※1は、あくまで”証拠”であり、仮に合意まで至ったとしても、”合意”部分は効果はありません。



3.制度が一人歩きしないために

この制度は国民のためにあるものです。そして申請の当事者のためにならなければなりません。

旧公図であれ、大事な筆界資料の一つであることは間違いありませんし、

どんな時も当事者の意見を通せという意味合いのものではりません。

ただ、当事者の意見を人的証拠としてもっと高く評価しなければ、制度が一人歩きし、誰のための制度か

わからなくなってしまうのでは ないでしょうか。


4.制度改善は私達に懸かっている

私達が法務省に対して意見を言わなければ、折角の画期的な制度も魅力あるものになりません。

一般の方にこの制度改善を求めることは非常に難しい事と思います。 

知識と実務を兼ね備えていて、問題点に気がつけるのは私達土地家屋調査士しかいません。 

安心して筆界特定を申請できるようにするために。 まだ制度は始まったばかりです。

どんな制度も改善なくして良い制度になることは無いと思っております。


※取り下げ件数が多い原因の一つにもなっていると思います。

※仮に旧公図に限った言い方をしていますが、その他資料に関しても同じ問題があります。


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