
【 実務全般 】 筆界と所有権界の問題 |
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【 意見 】 筆界と所有権界の位置が違うのは当たり前ではありません。
最近「筆界と所有権界が違うのは当たり前」という論が土地家屋調査士の一部から出ています。
※以下 当たり前論と言います。
これは早急に改めなければならない問題だと思っています。
当たり前だと思っている方へ、どうか最後までお読みいただけないでしょうか。
なぜこれが問題なのか?
社会の中で登記制度が信頼されている理由は、知らずとも当たり前に所有権界と筆界が合致しているからです。
私たち土地家屋調査士は筆界を取り扱うため、仮に筆界が当たり前に所有権界と違うならば、私たちのやっていることは
意味を失ってしまいます。 そればかりか登記制度に不安を与え、登記を無視して所有権界で主張を始める方が
増えだすと境界紛争は確実に増加することでしょう。 これは絶対に避けなければならない問題です。
なぜ当たり前論がでてきたのか?
それは筆界特定の制度が始まり、筆界と所有権界の違いについて、研修で学ぶことが増えたため、所有権界について
意識する機会が増えたからです。
この2つのお陰で、私たちの筆界と所有権界の知識は飛躍的に向上したと言えます。 ただ、基本中の基本原則を
忘れていると、筆界と所有権界が違う と考えなければ処理ができない ということに陥いることがあります。
まず、思い出していただきたいことが2つあります。 その1つは、
筆界は”現地”にあるということです。
図面は筆界を”可視化”しているもので、登記は”可視化”した図面を”公示”しているものなのです。
例えば地積測量図を作成する時を例に挙げますと、現地の境界標間の距離10.00mを、地積測量図作成時に
測量誤差があり、9.90mで表示していたとします。 これを登記しても現地の筆界が0.10m移動するわけでは
ありません。
2つめは、
すべての図面に誤差があるということです。
古い図面であれば、現地の測量誤差、紙に線引きするときの誤差、読み取り誤差など様々な誤差を考慮しなければ
なりません。 筆界の探究と同時に、測量誤差の探究も必ず必要になるのですが、時々それが抜けてしまい、
測量誤差を考慮しない結果をもたらしていると思われます。
例えば、境界の資料が古い図面しか無かったとしても”線”で筆界を特定することが多くあります。
この時、図面の誤差について説明をすれば
必ず 古い図面の筆界誤差 > 新しい図面で必要となる筆界誤差 という関係になります。
誤差の大きいものから小さいものを求めることは、他にそれ以上の追加要素(証拠)が無いと不可能です。
もし古い資料だけで、誤差というものを考慮せずに現地に境界を復元すれば、当然大きなズレが生じてきます。
このズレは測量や図化の段階で生じたものが多く、筆界と所有権界が違うとは簡単には言えません。
もし仮に、地積測量図等の図面から現地に境界を復元し、現地のブロック塀や境界標とのズレが生じた場合、
まず、筆界は現地にあるという観点から、図面の測量誤差や当時の境界を確認の信憑性を探る必要があります。
そして大事なのは、少しでも違うという可能性があるのなら、
「お隣のブロック塀が食い込んでいる」 「境界標が動いてる」 「筆界と所有権界が違う」 等の当事者が摩擦を起こす
ようなことを言うべきではありません。
私たちの社会における、これからの役割のひとつに境界紛争の解決を目指すならば、筆界だけでなく当事者の心も
考えて説明をしなれけばなりません。 「筆界と所有権界が当たり前に違う」と言われた当事者は、混乱し、登記に
不信感を持てば、頼れるものを失うことで、ますます精神的に不安定になることでしょう。
それよりも、登記は”正しく公示”さえしていれば信頼できるもので、権利を守ってくれる効果がある、ということを
説明していくべきだと思います。
まとめとして
現在の登記制度が信頼を得ているのは、制度が始まってからこれまで、意識せずとも土地家屋調査士が筆界と所有権界を
合致させてきたという努力の成果であると思います。 現地の土地利用状況によっては、確かに筆界と所有権界が異なってくる
こともありますが、今は基本を忘れているために当たり前論を使わなければ業務を処理できないということが少なからず発生
しているような気がします。
私たちの仕事の目的で一番大切なことは 土地家屋調査士法 第1条 「・・・不動産の表示に関する登記手続の円滑な
実施に資し、もつて不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とする。」 です。
少なくとも 「筆界と所有権界が違うのは当たり前」 という考え方では、権利を明確化していくことはできません。
当たり前論を土地家屋調査士が絶対に持ってはいけないのです。
※すごい乱文で構成も悪くてすみません。。。いつか編集しますm( _ _;)m 急いで訴えたいことだったのです。
※地積測量図が現地と違う と、筆界と所有権界が違う、とは、全く次元の違う話です。
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