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【 紛争解決実務 】 所有権界についての紛争解決方法として、どういうものがあるか?
【  要   約  】

1概要   

  原則 当事者で自由に決められる。(ただし第三者を拘束しないこと。)

2当事者同士の話し合い(示談)で解決できるか?

 (1)筆界が不明なときの示談

  有効:他に特段の資料が無ければ筆界と推認される可能性あり。

 (2)筆界を修正するための示談

  有効:ただし所有権界の示談として。(筆界のみという意思表示が明確な時は無効)

3裁判上の和解、民事調停で解決できるか?

  解決可能 所有権界を自由に決められる。

4話し合いによる解決の当事者間における法的効果

 (1)当事者間における原則的効果

  原則 筆界と一致しない部分は、相手方に譲渡したものとみなされます。(民696)

     筆界の位置不明や修正の意図を問わない。

 (2)どのような場合に、当事者は錯誤による和解無効を主張できるか?

  原則 「争いの目的」であった事項の蒸し返しはできない。(和解の確定効)

  a 和解無効を主張できない場合

    境界箇所を勘違いしていた。(「争いの目的」に錯誤がある。)

  b 和解無効を主張できる場合

    境界標が子供のいたずらで動いていた。(和解の前提要素に錯誤がある。)

  c 土地家屋調査士作成の公図の写しが誤っていることが、後日判明した場合

   (a) 無効になるケース

     公図の写しが和解の要素となっていた。(当事者双方が公図は間違い無い!)

    (b) 有効になるケース

     公図の写しは和解の一資料にすぎなかった。(双方が公図はいい加減かも…)
  

 5話し合いによる解決の承継人に対する効力

 
(1)包括承継人に対する効力

    所有権界についての当事者の合意に拘束される。

 
(2)特定承継人に対する効力

  a 甲が単に「1番地」と表示して丙に売却した場合

    和解後の自分の所有権が及ぶ範囲が売却対象となる。

  b 甲が“筆界の範囲”を「1番地」と表示して丙に売却した場合

    二重譲渡が発生する。(乙に所有権を認めた部分と、丙に売却した部分)

    注意:争いを防ぐために、筆界と所有権界がずれたらすぐ登記する。


 6話し合いによる解決の登記官に対する効力

 
(1)法的効力

   無い。原則自由であり、登記官の権限を法的に拘束しない。

 
(2)事実上の効果

   筆界認定の有力な資料となる。筆界資料に照らし特段の不合理無し→和解成果援用


 
7筆界認定等の際の「立会」等と「和解(契約)」の関係

  (1)問題の所在

   多様な場面の立会いや承諾にはどんな効果があるのか?

   ・地籍調査  ・登記官の実地調査  ・下水道工事  など

  (2)基本的視点

  a 原則 筆界の合意に法的意味は無いが、所有権界が有効になる可能性あり。

  b 和解の目的 所有権について互譲し、私法的紛争を解消する。

  c 和解の条件 お互いが譲歩すること。

 (3)表示登記等の申請のための、土地家屋調査士・登記官等の実地調査への立会・
    承諾書の提出

  a 原則 私法上の合意が成立する余地無し。(登記官に対して申述するもの)

  b 例外 ついでに隣地所有者と境界に塀を作った。(契約成立の間接証拠となる)

 
(4)公共用物の管理者に対する、いわゆる境界明示についての立会・承諾書の提出等

    (3)のabと同じ考え方

 
(5)国土調査の際の地籍調査に対する立会等

    (3)のabと同じ考え方

  ※国土調査法に基づく地籍調査は、土地の現状のあるがまま調査・把握してこれを
   記録する作業にすぎません。
  注意:所有権界について和解が成立するためには、明確な意思表示が必要です。

 (6)境界確定協議における立会等

  a 原則 所有権界に関する契約が成立する。

  b 理由 国有財産法に基づく立会いは、所有権界について確認を求めているから。

 
(7)境界査定における立会等


   
筆界と所有権界が形成的に創設される。現在実施無し。


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※上記は、法務省法務総合研究所研修第3部長 寶金敏明 「境界確定の法理と登記実務」を要約したものです。
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