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【 紛争解決実務 】 境界紛争に関する2種類の裁判―その要件と効果―

【 要  約 】

1概要  
 境界確定訴訟→筆界を再形成するもの

 所有権確認訴訟→所有権界を確認するもの

  ※ 要件、効果は著しく異なる

2境界確定訴訟についての学説の概要
 
(1) 問題の所在
 境界確定訴訟に規定が無いため、さまざまな学説が生まれている。
  a 境界確定訴訟で確定される境界とは何なのか
  b どのような手続で裁判が進められるのか
  c 判決の効力は第三者に及ぶのか
  d 和解や請求の認諾・放棄ができるのか
  e その他

 (2)境界確定訴訟の本質についての争い
  a 大別 「確認訴訟説」と「形成訴訟説」
  b 裁判実務の見解
   「形式的形成訴訟説」・・・形成基準となる法規なし→要件欠く→法律的主張が不可

 
(3)境界確定訴訟と所有権確認訴訟の違い
  a 概要 筆界は公的な存在だが元来所有権界をなぞっただけのもの(根は同じ)
      境界確定訴訟も私的な境界紛争の解決手段でしかない
  b 理論的相違
   「境界確定訴訟」・・・裁判官が筆界認定を行う訴訟事件
                〔実質は非訟事件 効力は第三者に及ぶ〕
                参考:共有物分割手続に基づく訴訟事件について行われる筆界認定は
                    非訟事件の取扱い
   「所有権確認訴訟」・・・普通の民事訴訟事件〔効力は当事者のみ〕

 
(4)なぜ二つの訴訟が存在するのか
  a 問題の所在 明確な根拠規定のない境界確定訴訟を、なぜ認める必要があるのか
  b 証拠資料が不足している場合の隘路(あいろ)
    ・証拠不足で棄却されたら所有権確認訴訟ができない
  c 登記官を拘束しないことの伴う隘路
   ・ 筆界は公的存在で所有権の争いに左右されない
  d 問題の解決手段としての境界確認訴訟
   ・ 筆界の明確化は国家の責務では? 証拠資料の有無を問わずに手続きできる

 
(5)2つの訴訟の比較
  a 所有権確認訴訟
   (a) 審判の対象 所有権界〔線〕、間接的に係争地に効力が及ぶ〔面〕
   (b) 訴訟の本質 私権の法的実現を求める作用
   (c) 訴訟の当事者 所有者と相手方は誰でも良い。(法的利益が存在すること。)
   (d) 裁判外の解決 私人が自由に話し合いで決められる
   (e) 裁判上の和解 可能
   (f) 認諾・請求の放棄・調停 可能
   (g) 原告が自己の主張する境界を特定できない場合 提訴不可
   (h) 反訴を提起することの当否 反訴しなければ原告の主張通り又は棄却となる
   (i) 控訴審での不利益変更禁止の適用の有無 有り、付帯控訴する
   (j) 証拠が乏しい 棄却
   (k) 職権による証拠調べ 無し
   (l) 自白の拘束力 有り
   (m) 判決の第三者効 無し
   (n) 3以上に地番境が1点で交わるとき 訴訟は2当事者間で行える

  b 境界確定訴訟
   (a) 審判の対象 筆界
   (b) 訴訟の本質 非訟事件に近い性質、形式的形成訴訟
   (c) 訴訟の当事者 相隣地所有者
   (d) 裁判外の解決 不可(法律上の建前)
   (e) 裁判上の和解 不可
   (f) 認諾・請求の放棄・調停 不可
   (g) 原告が自己の主張する境界を特定できない場合 提訴可能
   (h) 反訴を提起することの当否 不適法
   (i) 控訴審での不利益変更禁止の適用の有無 無し、付帯控訴不要
   (j) 証拠が乏しい 棄却無し
   (k) 職権による証拠調べ 有り、当事者の主張にとらわれない証拠収集
   (l) 自白の拘束力 無し
   (m) 判決の第三者効 有り(なれ合い訴訟は認められない可能性あり)
   (n) 3以上に地番境が1点で交わるとき 訴訟は2当事者間で行える
    ※本来は固有必要的共同訴訟として扱われるべきである。
     別々の訴訟が具一致の判決を生む可能性がある。再審事由が発生する。

 (6)2つの訴訟の相互関係
  a 訴えの併合 併合提起可能
  b 訴えの追加的・交換的変更
   (a) 所有権確認訴訟を提起したが、証拠資料が手薄のため請求が棄却される恐れあり
   (b) 境界確定訴訟を提起して争ってきたが、和解の機運がでてきたという場合
     訴えを追加的に、あるいは交換的に変更することができる。
  c 時効中断との関係
   (a) 所有権確認訴訟 時効中断する
   (b) 境界確定訴訟 時効中断すると解する。(実質は所有権保全のための行為だから)



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 ※上記は、法務省法務総合研究所研修第3部長 寶金敏明 「境界確定の法理と登記実務」を要約
   したものです。
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