
【 筆界確認実務 】 本当の「公正中立」とは何か? |
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【 問題提起 】
言葉の意味が履き違えられやすい 「公正中立」
「公正中立」と「公法上の筆界」は、私たちにはとても大切な言葉だと思います。
しかし、気をつけないとこれが本来の意味を捉えることなく、業務の弊害になる場合すら出てきているような気がします。
本当の中立を求めていくと、”当事者の意見に影響されてはいけない”という考え方が生まれます。そして悪く解釈が進めば
”当事者の意見を聞かない”という考え方になっている場合があります。
それは、皮肉にも筆界は当事者の意見で動かせないという「公法上の筆界」の考え方が助長しているような気がします。
果たしてこのような考え方が本当の公正中立なのでしょうか?
【 当職の意見 】
1.筆界確認における本当の公正中立とは?
(1)まず当事者の意見を聞くこと
当事者の意見をとことん引き出すこと。 私は個人的にそう思っています。
筆界を特定するための証拠収集の中で、物的証拠として地積測量図等の書類収集や、人的証拠として当事者の意見や
筆界を知っている様々な人の意見を収集します。 ”証拠”の中には、当事者の意見は必ず含まれるのです。
本来収集すべき当事者の意見は聞かずして、正しい筆界確認作業が行えるとは思えません。
物的証拠収集は当然として、まず当事者の意見を聞くことが、公正中立への第一歩だと思います。
(2)当事者の片方だけが知っている場合
当事者の意見は、筆界に関して知らない場合もあれば、具体的に知っている場合もあると思います。
とくに当事者の片方だけが知っているからといって、それを採用することが公正中立に反するわけではありません。
全体の証拠資料(物的証拠と人的証拠)から、片側意見の証拠価値を吟味することが本当の正しい筆界の特定方法で
あり、証拠があるのに集めないほうが、よっぽど公正中立でないと考えます。
(3)意見が合意している場合
当事者の意見が合致し、お互いで納得しあっている状態、すなわち「合意」していたらどうなるか。
筆界は公法上のもので、当事者間で合意できないのは言うまでもないですが、だからと言ってそれを無視するような
ことがあってはいけません。 単に合意箇所だけが意味が無いだけで、意見を発している部分は証拠として収集しなけれ
ばなりません。 そしてもし当事者双方の意見が合致しているのであれば、相反する双方からでてきた証拠内容が
合致するということです。 それは、その当事者意見という証拠の証明力を高める事実なのです。
(4)当事者は筆界に関する意見を言いにくい
お隣同士で影響があることなので、当事者はとても意見を言いにくいものです。 お隣さんとの関係を悪くしたくないと
誰もが思っているからです。 そのため、作業の中で当事者との信頼関係を築きながら、意見をとことん引き出すという意識を
もって作業することが大事だと思います。 当事者に、「あなたの意見は相手には伝えない」ということを言うぐらいの
配慮が少なくても必要ではないかと思います。
(5)出てきた意見を相手側に伝えない
筆界に合意は関係ないのです。 あくまで証拠収集の意味で意見を拾っているわけです。 通常であれば相手に意見を
伝えることは何ら意味の無い行為で、相隣関係を悪化させるリスクのある してはならない行為だと思います。
筆界位置に確認を求めるならば、私たちが証拠収集の上で得た結果(意見)として伝えることが大事だと思います。
(6)「公正中立」とは誰のため
”当事者”にとって公正中立であることだと思います。 筆界だけを見て作業していて、当事者は公正中立を感じるでしょうか。
とくに依頼者の相手方(隣接地所有者)のほうが、情報提供が少なく、私たちとの信頼関係が築けないまま承諾をしなければ
ならないことがあるため、不安を感じやすいものです。 私のところへの相談も、全部相手方で、不安を感じた方からです。
公正中立を当事者に感じていただけるように、当事者をもっと見つめていくことが大事ではないでしょうか。
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ご意見違う方、たくさんいらっしゃると思います。 それはあって然るべきだと思いますし、それが討議されてこそ、
本当に良い考え方が生まれるものと思っています。
制度と実務との乖離を防ぐために、現場に出ている土地家屋調査士の声をもっと集めることも大事ですよね。
決して当事者の合意で筆界を決めよう!と言っているわけではありません。 ご注意くださいm( _ _ )m
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